不動産投資にとってデッドクロスってそんなに恐ろしいもの?具体的に計算してみた。
デッドクロス。。。恐ろしい言葉ですね。
株式相場ではデッドクロスは株価下落のシグナルですが、
不動産投資ではデッドクロスとは黒字倒産のシグナルと言われています。
不動産投資でデッドクロスに陥ると、最悪の場合黒字倒産してしまうことがあります。
げに恐ろしき現象なのです・・・
くれぐれも気をつけてくださいね。
勉強せずに不動産投資を始めてはいけないですよ・・・
という
不動産投資本、ウェブサイト、セミナーが巷には溢れていますが、
正直私には、
不動産投資のデッドクロスがなぜ黒字倒産につながるのか
さっぱりわかりませんでした
ということで、
いろんな物件がデッドクロスになったらどうなるかを机上計算してみました!
結論としては、普通に良い物件を買っていれば「デッドクロス」が発生しても何の問題もありません。
いかついネーミングにビビらされているだけです。
デッドクロスってなんだかこわいなぁと不安になっている方の参考になれば幸いです!
不動産投資におけるデッドクロスとは
不動産投資におけるデッドクロスとは
減価償却費<借入金の元本返済
になることです
借入金の元本返済が減価償却費よりも大きくなるんですよ!
なんて恐ろしいことなんでしょう!!
やばいですよ!やばいですよ!
なぜかって?
だって、
借入金の元本返済が減価償却費よりも大きくなるんです!
みたいな感じで、
不動産投資初心者に不安をあおるために使われてるデッドクロスですが、
さて一体どんなものか一つ一つ勉強してきましょう。
めんどくさいですけど、
投資で無知な状態は、裸に生肉を巻きつけてハイエナの群れに飛び込むようなものですので、
ひとつご勘弁ください。
いきなりデッドクロスに入る前に
まず次の2つについて理解しましょう
- 減価償却費
- キャッシュフロー(手元に残る資金)
減価償却費とは
まず減価償却費とは、
時間の経過や使用により価値が減少する資産を取得した際に、
取得した費用をその耐用年数に応じて費用計上していく会計処理のことです。
減価償却の対象となる資産は、取得した段階で全額を経費計上するのではなく、
資産を使用できる期間で分割して、毎年減価償却費として計上することになります。
不動産投資の場合は不動産の建物部分は経年により劣化し価値が減少しますから減価償却対象になります。
8,000万円の建物を購入して不動産投資を開始した場合、開始1年目でその8,000万円をすべて経費で計上とはならないわけです。
経年劣化により価値が下がっていくにつれて徐々に経費として計上していきます。
ちなみに、土地は時間の経過や使用により価値が減少しないので、減価償却の対象にはなりません。
減価償却費は以下の式で計算されます。
減価償却費=取得した費用÷資産を使用できる期間
取得した費用
不動産を「取得した費用」は不動産取得価額といいます。
原則として、不動産の購入代価とその資産で事業を開始するために必要だった費用が含まれます。
以下は不動産取得価額に含まれます
- 仲介手数料
- 固定資産税清算金
以下は含めても含めなくても良いです
- 不動産取得税
- 登録免許税及び司法書士報酬
資産を使用できる期間
「資産を使用できる期間」を減価償却期間もしくは耐用年数と言います。
法定耐用年数>築年数のとき
減価償却期間=(法定耐用年数-築年数)+築年数×0.2
法定耐用年数≦築年数のとき
減価償却期間=法定耐用年数×0.2
法定耐用年数は以下のとおりです。
構造 | 法定耐用年数 |
軽量鉄骨 | 19年 |
木造 | 22年 |
重量鉄骨 | 34年 |
RC | 47年 |
ですので、
築20年であれば
RCであれば減価償却期間は31年
木造であれば減価償却期間は6年
となり、
築50年であれば
RCであれば減価償却期間は9年
木造であれば減価償却期間は4年
になります。
築古木造を購入して4年で償却っていうフレーズはここから来ています。
キャッシュフローとは
さて次にキャッシュフローです。
デッドクロスは減価償却費<借入金の元本返済
なので、
キャッシュフローなんて言葉出てこないから関係ないじゃん!
と思いますが、
デッドクロス→黒字倒産?
の黒字倒産に関わるのがキャッシュフローになります。
キャッシュフローとは、言葉通りに現金の流れという意味で、
家賃収入があったり、経費払ったり、税金払ったり、ローン払ったりするけど、
結局手元に現金なんぼ残るの?
を計算したものです。
いわゆる黒字倒産とは、
帳簿上の売上-経費では黒字なのに、
手元には現金が無くなってしまって、商品の支払いや借入金の支払いができずに倒産してしまうという現象です。
なので、
キャッシュフローは、
キャッシュフローがしっかりプラスになっていれば黒字倒産しないし、
キャッシュフローがマイナスになれば手元からどんどんお金が無くなってしまう
という判断ができる指標になります
キャッシュフロー(手元に残る資金)は次の式で計算することができます。
キャッシュフロー=税引き後利益-借入金の元本返済+減価償却費
デッドクロスに関係する「借入金の元本返済」と「減価償却費」が出てきましたね!
経費として計上できないけど、実際にお金が減っていく借入金の元本返済
と
経費として計上できるけど、実際にはお金が減らない減価償却費
がキャッシュフローには絡んできます
税引き後利益
税引き後利益とは、
その名の通り、税引き前の利益から税金を差し引いたものになりますが、
利益が大きければ税金が高くなり、
利益が小さければ税金が低くなります。
税金=税引き前利益×税率
税引き後利益=税引き前利益-税金で計算できます。
税引き前利益
税引前利益は次の式で計算できます。
税引き前利益=不動産収入-経費-減価償却費
経費には修繕費、管理費、固都税、借入金の利息などがはいりますが、
借入金の元本返済を入れることはできません。
減価償却費は経費として税引き前利益から差し引くことができます。
デッドクロス前後のシミュレーション
さてこれで必要な知識である
- 減価償却費
- キャッシュフロー
の説明が終わったところで、
デッドクロスのシミュレーションをしてみましょう!
RCで法定耐用年数内の借入時のデッドクロス
まずは私の専門の中古RC1棟投資です。
私の持ってる物件を参考にして、例題を作ってみました!
物件スペックと借入条件
- 物件価格1億円
- 築20年
- 利回り9.5%、家賃年収950万円
- 借入額1億円、融資年数27年、金利1.5%
- 借入金の利息以外の経費は150万円
減価償却費
- 建物の不動産取得価額8,000万円
- 減価償却期間は31年
- 減価償却費は8,000万円/31年=258万円
RC購入1年目のデッドクロスとキャッシュフロー
- 減価償却費は8,000万円/31年=258万円
- 借入金の元本返済=303万円 (エクセルのPPMT関数で計算できます)
- 借入金の利息=150万円(エクセルのIPMT関数で計算できます)
減価償却費258万円<借入金の元本返済303万円
いきなりデッドクロス発生です(笑)
やばいよ!やばいよ!黒字倒産しちゃうよ!
といことで
慌てて現金の流れをキャッシュフローを計算してみます。
キャッシュフロー=①税引き後利益-②借入金の元本返済+③減価償却費
税引き前利益=不動産収入-経費-借入金の利息-減価償却費
=950万円-150万円-150万円-258万円
=392万円
税率20%で計算すると、
税金=税引き前利益×税率
=392万円×0.2=78万円
①税引き後利益=税引き前利益-税金
=392万円-78万円
=314万円
②借入金の元本返済 303万円
③減価償却費 258万円
キャッシュフロー(手元に残る資金)=314万円-303万円+258万円
=269万円
購入1年目にしてデッドクロスが発生してますが、
キャッシュフローは269万円になります。
1年目はとりあえず手元の現金が269万円増えます。
黒字倒産しないみたいでよかった・・・
でも、デッドクロスしちゃってるからな、、、このまま持ち続けたらどうなるんだろう。。。
不安しか無いよ。。。
ということで20年後の計算をしてみます!
RC購入20年目のデッドクロスとキャッシュフロー
- 減価償却費は8,000万円/31年=258万円 で変わらず
- 借入金の元本返済=402万円 (エクセルのPPMT関数で計算できます)
- 借入金の利息=51万円(エクセルのIPMT関数で計算できます)
当たり前ですが、
減価償却費258万円<借入金の元本返済402万円
購入1年目からずーっとデッドクロス状態です
キャッシュフロー=①税引き後利益-②借入金の元本返済+③減価償却費
税引き前利益=不動産収入-経費-借入金の利息-減価償却費
=950万円-150万円-51万円-258万円
=491万円
借入金の利息が減った分、税引き前利益は増えてしまいます。。。
(実際には家賃低下と経費増加で、利益はそんなに増えないと思います)
税率20%で計算すると、
税金=税引き前利益×税率
=491万円×0.2=98万円
①税引き後利益=税引き前利益-税金
=492万円-98万円
=394万円
②借入金の元本返済 402万円
③減価償却費 258万円
キャッシュフロー(手元に残る資金)=394万円-402万円+258万円
=250万円
購入20年目は、1年目に比べてキャッシュフローが19万円減ってしまいました。。。
・・・ってそれがどうしたんじゃい?
デッドクロスしたら黒字倒産するんちゃうんかい??
あれあれ話が違いますね?
融資を受けている間に、減価償却期間が終わらないケースだから黒字倒産しないのかな?
ということで、もっと物件を古くして、耐用年数オーバーの融資を受けたパターンを計算してみます。
RCで耐用年数オーバーの借入時のデッドクロス
物件スペックと借入条件
- 物件価格1億円
- 築40年
- 利回り15%、家賃年収1,500万円
- 借入額1億円、融資年数20年、金利1.5%
- 借入金の利息以外の経費は240万円
減価償却費
- 建物の不動産取得価額8,000万円
- 減価償却期間は15年
- 減価償却費は8,000万円/15年=533万円
購入1年目のデッドクロスとキャッシュフロー
- 減価償却費は8,000万円/15年=533万円
- 借入金の元本返済=432万円 (エクセルのPPMT関数で計算できます)
- 借入金の利息=150万円(エクセルのIPMT関数で計算できます)
減価償却費533万円>借入金の元本返済432万円
デッドクロスは起きていません
税引き前利益=不動産収入-経費-借入金の利息-減価償却費
=1,500万円-240万円-150万円-533万円
=577万円
税金=税引き前利益×税率(20%)
=577万円×0.2=115万円
①税引き後利益 462万円
②借入金の元本返済 432万円
③減価償却費 533万円
キャッシュフロー(手元に残る資金)=462万円-432万円+533万円
=563万円
問題無しです。
デッドクロス起きてないからまぁ問題なしか・・・
購入15年目のデッドクロスとキャッシュフロー
- 減価償却費は8,000万円/15年=533万円
- 借入金の元本返済=533万円 (エクセルのPPMT関数で計算できます)
- 借入金の利息=50万円(エクセルのIPMT関数で計算できます)
減価償却費533万円=借入金の元本返済533万円
まさにデッドクロスが起きようとしているところです!
税引き前利益=不動産収入-経費-借入金の利息-減価償却費
=1,500万円-240万円-50万円-533万円
=677万円
税金=税引き前利益×税率(20%)
=677万円×0.2=135万円
①税引き後利益 542万円
②借入金の元本返済 533万円
③減価償却費 533万円
キャッシュフロー(手元に残る資金)=542万円-533万円+533万円
=542万円
やっぱり問題無しです。
デッドクロスってなんなんだ?
でも次の年から減価償却費がゼロになりますからね!
きっと超危険ですよ!!ワクワク
購入16年目のデッドクロスとキャッシュフロー
- 15年で減価償却が終了したので価償却費は0円
- 借入金の元本返済=540万円 (エクセルのPPMT関数で計算できます)
- 借入金の利息=42万円(エクセルのIPMT関数で計算できます)
減価償却費0円<借入金の元本返済533万円
完全にデッドクロス状態!というか減価償却費がゼロです!
税引き前利益=不動産収入-経費-借入金の利息-減価償却費
=1,500万円-240万円-42万円-0万円
=1,218万円
利益がでかくなりましたね!
ちょっと税率を上げておきましょう
・税率:33%
・控除額:153万6,000円
税金=税引き前利益×税率(33%)-153万円
(こちらは所得税の即算式です。詳しくは所得税の税率の計算方法を調べてください!)
=1,218万円×0.33-153万円=249万円
①税引き後利益 1,218万円-249万円=969万円
②借入金の元本返済 540万円
③減価償却費 0円
キャッシュフロー(手元に残る資金)=969万円-540万円+0円
=429万円
減価償却費なくなってキャッシュフローが100万円以上減少
確かに痛いですけど
黒字倒産って言うほどでも無いよね・・・
・・・ひょっとして、ちゃんと利益出てる物件だと
デッドクロスが出てもなんの問題もないんじゃないかい??
というわけで、もっとダメそうな物件でデッドクロスの計算をしてみましょう。
木造で耐用年数オーバー借入時のデッドクロス
さて、ダメそうな物件で計算すると言っても、
どうやって計算しようかな。。。困ったな。。。と思ったのですが、
そういやダメ物件なら毎日一斉配信メールで来てるや!
ということで、今日メールで来てた物件で適当に計算してみます。
物件スペックと借入条件
- 物件価格4,000万円
- 築33年
- 利回り8%、家賃年収320万円
- 頭金1,000万円
- 借入額3,000万円、融資年数15年、金利1.5%
- 借入金の利息以外の経費は50万円
減価償却費
- 建物の不動産取得価額2,000万円
- 減価償却期間は4年
- 減価償却費は2,000万円/4年=500万円
築古木造購入1年目のデッドクロスとキャッシュフロー
- 減価償却費は2,000万円/4年=500万円
- 借入金の元本返済=180万円 (エクセルのPPMT関数で計算できます)
- 借入金の利息=45万円(エクセルのIPMT関数で計算できます)
減価償却費500万円>借入金の元本返済180万円
デッドクロスは起きていません
税引き前利益=不動産収入-経費-借入金の利息-減価償却費
=320万円-50万円-45万円-500万円
=-275万円
赤字になりました。
税金はゼロ円ですね
①税引き後利益 -275万円
②借入金の元本返済 180万円
③減価償却費 500万円
キャッシュフロー(手元に残る資金)=-275万円-180万円+500万円
=45万円
うん、これはデッドクロスになるとヤバそうですね。。。
築古木造購入5年目のデッドクロスとキャッシュフロー
- 減価償却費は5年目なのでゼロ円
- 借入金の元本返済=191万円 (エクセルのPPMT関数で計算できます)
- 借入金の利息=34万円(エクセルのIPMT関数で計算できます)
減価償却費0<借入金の元本返済191万円
はい、デッドクロス起きました!
税引き前利益=不動産収入-経費-借入金の利息-減価償却費
=320万円-50万円-34万円
=236万円
減価償却費が無くなったので黒字になりました
税金=税引き前利益×税率(20%)
=236万円×0.2=47万円
①税引き後利益 189万円
②借入金の元本返済 191万円
③減価償却費 0円
キャッシュフロー(手元に残る資金)=189万円-191万円
=-2万円
はー良かったやっとデッドクロスで赤字になったー
デッドクロスで黒字倒産するのは単なるダメ物件だけ
結局原因は税金です。
多額の減価償却費のおかげで0円だった税金が、
減価償却費が無くなったせいで47万円も納税することになった。
だからキャッシュフローが赤字になったんです。
逆に言うと、その程度のことでキャッシュフローが赤字になってしまうダメ物件だということです
良い物件をフルローンで購入したら大体デッドクロスになります(笑)
耐用年数以上に融資期間を伸ばして元金返済を少なくして、みかけのキャッシュフローを増やす(新築木造あるある)
減価償却費は目一杯大きくとって、税金をゼロにすることでキャッシュフローを増やす(築古あるある)
みたいな
ダメ物件以外は、
デッドクロスが起きても何の問題もありません。
まとめ:デッドクロスってそんなに恐ろしいもの?具体的に計算してみた。
というわけで、デッドクロスになったら、どれだけキャッシュフローにダメージを受けるのか、
黒字倒産になってしまうのかを具体的な数字を使って計算してみました。
結果としては、デッドクロス恐れるに足らず、
よっぽどダメな物件を買ってなければ心配する必要が無いことがわかりました。
大げさな名前にビビってしまいますが、単に税金の額がちょっと増えるだけです。
税金の額がちょっと増えただけで赤字になってしまうということは、
デッドクロスうんぬんの前に、その物件がダメな物件だということです
デッドクロスにならないように、頭金入れて借入金増やしましょうとか
そうなる前に売却する戦略にしましょうとか
不動産投資の講師や、コンサルが色々言うてきよりますが・・・
あんたそれ、
ちょっと課税対象になる所得額が上がって税金が増えただけで、
すぐ赤字になるダメ物件買わそうとしてるだけですから~
クロスって名前だけでなんでもビビると思うなよ!!
聖闘士星矢斬り!
残念!
長々とつまらない記事を書いてしまいました(笑)
どなたかの参考になっていれば幸いです。
お粗末さまでした。